「褒める」を自分に許す。自己肯定感を高める簡単な方法
自分を褒めることに、なぜか気恥ずかしさや抵抗を感じることはありませんでしょうか。
「大したことじゃないのに」「もっとできるはずだ」と、ついつい自分に厳しくなってしまい、自分の努力や成果を素直に認められないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に、日々の仕事で目標達成を求められたり、SNSで他者の活躍が目に入ったりする中で、自分には足りない部分ばかりが目に映り、「自分を褒める」という行為が遠いものに感じられることもあるでしょう。
しかし、自分を褒めることは、自己肯定感を育み、内なる葛藤を解消していくための大切な実践の一つです。今回は、なぜ私たちが自分を褒めるのが苦手だと感じるのかを探り、自己肯定感を高めるための具体的な「自分を褒める」方法についてご紹介します。
なぜ、私たちは自分を褒めるのが苦手なのでしょうか?
自分を褒めることに抵抗を感じる背景には、いくつかの要因が考えられます。
一つは、「謙遜は美徳」といった文化的な影響や、「自己アピールは良くないこと」という思い込みです。他者からの評価を気にしすぎるあまり、自分の価値を過小評価する癖がついてしまっているのかもしれません。
また、「完璧でなければ認められない」という考え方も影響します。仕事や日常生活で高い基準を自分に課し、小さなミスや至らなかった点にばかり注目してしまうと、褒めるべき点が見えにくくなります。他人と比較して自分は劣っていると感じる劣等感も、「褒めることなんて何もない」という気持ちに繋がることがあります。
さらに、単に「慣れていない」という理由もあります。私たちは子どもの頃から、失敗を指摘されたり、できていない部分に注目されたりする経験の方が、具体的に褒められる経験よりも多いかもしれません。そのため、大人になって自分で自分を褒めようとしても、どうすれば良いのか分からない、あるいは不自然に感じてしまうのです。
自分を「褒める」ことのメリット
自分を褒めることは、決して自己満足や傲慢になることではありません。むしろ、自分自身を肯定的に捉え直し、心の健康を保つために欠かせない行為です。
- 自己肯定感の向上: 自分の良い面や努力を認めることで、「自分はこれで良いのだ」という感覚が高まります。
- 心の安定: ポジティブな側面に目を向けることで、ネガティブな感情に振り回されにくくなります。
- 挑戦への意欲: 自分の能力を信じられるようになり、新しいことへの挑戦や困難な状況にも前向きに取り組めるようになります。
- 他者との関係性の改善: 自分自身を大切にできるようになると、他者との健全な関係を築きやすくなります。
自己肯定感を育む「自分を褒める」実践方法
では、具体的にどのように自分を褒める練習を始めれば良いのでしょうか。最初から大きな成果を褒める必要はありません。日々の小さなこと、当たり前だと思っていることに目を向けることから始めましょう。
ステップ1:小さな「できたこと」に意識を向ける
一日を振り返り、目標達成や大きな成功だけでなく、当たり前だと思っていた小さな行動や心持ちに意識を向けてみてください。
- 今日、締切を守れた
- 苦手な人にきちんと対応した
- 疲れていたけれど、頼まれた仕事を引き受けた(あるいは、断った)
- いつもより早く起きられた
- 部屋の片付けを少しだけ進めた
- イライラしたが、感情的に対応しなかった
- 誰かの話に耳を傾けた
- 笑顔で挨拶ができた
このように、結果だけでなく、そのプロセスや、その時の自分の選択、感情のコントロールなども「できたこと」として捉えてみましょう。
ステップ2:具体的に言葉にする
ステップ1で見つけた「できたこと」を、心の中で、あるいは声に出して、具体的な言葉で褒めてみます。
例:「今日は面倒だったけど、きちんとメールの返信ができた。えらい。」「プレゼン、緊張したけど最後までやり切れた。頑張ったね。」「SNSで比べて落ち込みそうになったけど、一旦見るのをやめられた。これは良い選択だった。」
ポイントは、抽象的な「頑張った」「えらい」だけでなく、「何を」「どうした」という具体的な行動を付け加えることです。これにより、自分の行動と肯定的な評価が結びつきやすくなります。
ステップ3:形に残してみる(ジャーナリング)
自分を褒めた言葉を、手帳やノート、スマートフォンのメモ機能などに書き残してみるのも効果的です。「今日の良かったこと」「自分褒めリスト」といったジャーナリングの習慣を取り入れてみましょう。
書き出すことで、自分の肯定的な側面に意識を向ける時間が確保できます。リストが増えていくことは、自己肯定感を育むための「見える化」にも繋がります。寝る前に数分間、今日あった小さな「褒めポイント」を3つ書き出す、といった習慣から始めてみるのも良いでしょう。
ステップ4:完璧主義を手放し、「まぁいっか」を許す
自分を褒めることに慣れていないと、「こんなことで褒めても良いのだろうか」「もっと完璧にできたはずだ」という思いが湧いてくるかもしれません。しかし、練習の段階では、完璧を求めないことが重要です。
「今日はこれができた。完璧じゃないけど、まぁいっか。」「失敗もあったけど、これも学びだ。よくやった。」のように、不完全さも含めて自分を受け入れる「自己受容」の視点を持つことも大切です。
無理にポジティブになる必要はありません
自分を褒める練習は、ネガティブな感情を否定することではありません。落ち込んだり、不安になったりする自分も大切な自分の一部として受け入れつつ、その上で、自分の努力や良い側面に光を当てる練習です。
内なる葛藤は、自分の様々な感情や思考がぶつかり合う場所です。その葛藤を乗り越え、ありのままの自分を肯定するためには、自分自身の良い部分を認識し、育んでいくことが不可欠です。
まとめ
自分を褒めることは、特別な才能や成果がなくてもできる、誰にでも開かれた自己肯定感を育むための道です。最初は何だか照れくさかったり、わざとらしく感じたりするかもしれませんが、続けるうちにそれは自分自身を大切にする自然な行為になっていきます。
日々の小さな「できたこと」に意識を向け、具体的に言葉にして、それを記録する。このシンプルなステップを重ねることが、少しずつあなたの自己肯定感を高め、ありのままの自分を受け入れる力に繋がっていくはずです。
今日から、あなたの内なる自分に、温かい言葉を一つ贈ってみてはいかがでしょうか。それは、あなたがあなた自身にとって、最も信頼できる応援者になるための一歩となるでしょう。