「なんだかモヤモヤする」に気づく。自分を否定せず感情を受け入れる心の整え方
私たちは日々、様々な感情を抱いて生きています。嬉しい、楽しい、悲しい、怒り、不安など、はっきりとした感情もあれば、「なんだかモヤモヤする」「すっきりしない」といった、うまく言葉にできない曖昧な感情もあります。
特に仕事でプレッシャーを感じたり、人間関係で気を遣いすぎたり、SNSを見て他人と自分を比べてしまったりする中で、こうした言語化しにくいモヤモヤとした感覚を抱くことは少なくないかもしれません。
この「モヤモヤ」は無視したり、すぐに消し去ろうとしたりしがちですが、実は自分の内側からの大切なサインであることがあります。このサインに気づき、適切に受け止めることが、内なる葛藤を解消し、ありのままの自分を肯定していくための重要な一歩となるのです。
「モヤモヤ」とした感情に気づくことの重要性
私たちの心の奥底には、様々な感情やニーズが隠されています。表面的には「大丈夫」と思っていても、内側では何らかの不満や疲労、満たされない欲求などがくすぶっていることがあります。このくすぶりが、「モヤモヤ」として表面に現れると考えられます。
このモヤモヤに気づかずにいると、以下のような状態に陥りやすくなります。
- 感情を抑圧してしまう: モヤモヤの原因が分からないまま、ただ不快なものとして無視したり、ポジティブ思考で無理に打ち消そうとしたりします。これは感情を心の中に閉じ込めることになり、長期的に見ると心の負担が増える可能性があります。
- 問題の本質が見えなくなる: モヤモヤが何から来ているのかが分からないため、具体的な対処ができず、同じような状況で再びモヤモヤを抱えてしまうサイクルに陥りやすくなります。
- 自己否定に繋がる: 「なぜ自分はいつもモヤモヤしているのだろう」「こんな感情を抱く自分はダメだ」と、理由が分からない不快感を自分の存在そのものと結びつけてしまい、自己肯定感が低下することがあります。
逆に、モヤモヤとした感情に「気づき」、それを否定せずに「受け入れる」ことができると、自分自身の内側で何が起きているのかを理解する手助けとなり、より建設的な対応が可能になります。それは、ありのままの自分を理解し、肯定するための基盤を築くことにも繋がります。
「モヤモヤ」に気づき、受け入れるための実践ステップ
では、具体的にどのようにしてこの曖昧な感情に気づき、受け入れていけば良いのでしょうか。いくつかのステップを踏むことで、このスキルを磨くことができます。
ステップ1:立ち止まり、内側に意識を向ける
まずは、日常の忙しさから少し離れ、静かに自分の内側に意識を向ける時間を作ります。座って目を閉じたり、散歩をしながらでも良いでしょう。体の感覚や、心に浮かんでくる思考、そして漠然とした感情に注意を向けます。
「今、自分はどんな感じがするかな?」と、問いかけてみてください。すぐに答えが見つからなくても構いません。ただ、その問いかけと共に内側を「観察する」練習です。
ステップ2:「モヤモヤ」に名前をつけてみる(感情ラベリング)
漠然とした不快感や違和感、それが「モヤモヤ」だと認識できたら、次にその感情に名前をつけてみることを試みます。
「モヤモヤ」という言葉も一つの名前ですが、もう少し具体的に表現できないかを探ってみます。例えば、
- これは「不安」に近いモヤモヤかもしれない
- 誰かに対する「不満」が原因かもしれない
- 何かを始めることへの「抵抗」かもしれない
- 自分が認められていないと感じる「寂しさ」かもしれない
- 疲れていることによる「だるさ」や「ゆううつ」かもしれない
思いつくままに、言葉を当てはめてみてください。たとえぴったりの言葉でなくても構いません。「〜のような感じ」という表現でも良いのです。
感情に名前をつけることを「感情ラベリング」と呼びますが、これにより、曖昧だったものが少し明確になり、コントロール可能なものだと感じられるようになります。脳科学的にも、感情を言語化することで、感情を司る扁桃体の活動が鎮静化されることが示唆されています。
ステップ3:感情をジャッジせず、ただ観察する
感情に名前をつけられたら、次はその感情に対して良い・悪いといった判断(ジャッジ)をしないように努めます。
「こんなことでモヤモヤするなんて、自分は器が小さいな」「もっとポジティブに考えなきゃ」といった否定的な評価を加えず、ただ「今、自分の中に〇〇という感情があるんだな」と、まるで遠くから雲が流れていくのを眺めるように観察します。
感情は自然に湧き上がってくるものであり、それ自体に善悪はありません。大切なのは、その感情があることを「許可する」ことです。「あぁ、自分はいま不安を感じているんだな。それはOKだ」というように、自分自身にその感情を抱いていることを許すのです。
ステップ4:感情の背景にあるものに少しだけ触れてみる
感情をジャッジせずに受け止めることができたら、少しだけ、その感情の背景にあるものに意識を向けてみましょう。
「なぜ、この感情が湧いてきたのだろう?」 「このモヤモヤは、自分に何を伝えようとしているのだろう?」
すぐに明確な答えが出なくても焦る必要はありません。例えば、「職場で自分の意見を言えなかった後にモヤモヤした」のであれば、「自分の意見を聞いてほしい」「もっと貢献したい」といったニーズがあるのかもしれません。「SNSで友達の成功を見てモヤモヤした」のであれば、「自分も何かを達成したい」「誰かに認められたい」といった願望があるのかもしれません。
ここで重要なのは、原因分析に深入りしすぎないことです。あくまで感情を受け入れることが目的であり、無理に解決策を見つけようとすると、かえって自分を追い詰めることにもなりかねません。感情の背景にあるものを「少しだけ知る」というスタンスで臨むことが大切です。
日常で実践するためのヒント
これらのステップを日常生活に取り入れるためのヒントをいくつかご紹介します。
- スキマ時間を活用する: 通勤中、休憩時間、寝る前など、数分でも良いので静かに自分の内側に意識を向ける時間を作ります。
- ジャーナリング: モヤモヤした時に、ノートやスマホにその感情や、頭に浮かんだこと、体の感覚などを書き出してみます。書くことで、感情が整理されやすくなります。
- 体の感覚に注意を向ける: 感情は体に現れることも多いものです。肩が凝っている、胃が重い、呼吸が浅いなど、体の声に耳を澄ませることも、感情に気づく手がかりになります。
まとめ
「なんだかモヤモヤする」という曖昧な感情は、私たち自身の内側からの大切なメッセージです。これを無視したり否定したりするのではなく、立ち止まって気づき、名前をつけて、ジャッジせずに受け入れる練習をすることで、自分自身のことをより深く理解できるようになります。
感情に気づき、受け入れることは、ネガティブな感情に振り回されず、心の安定を保つことにも繋がります。そして、それはありのままの自分、良い部分もそうでない部分も含む自分自身を丸ごと肯定していくための、確かに歩み出せる第一歩となるのです。
最初は難しいと感じるかもしれませんが、焦らず、できることから少しずつ試してみてください。自分の感情に優しく寄り添う時間を持つことが、自己肯定感を育み、内なる葛藤を乗り越える力になっていくことでしょう。